橋本紡『葉桜』【BOOKレビュー】

橋本紡さん。文庫『流れ星が消えないうちに』、ライトノベル『半分の月がのぼる空』など表題作多数の小説家です。

橋本先生の作品を読んだあとはいつも、切なく、それでいて爽やかな気持ちになります。私は橋本先生のファンになって7年目となりました。

本記事では、同著者の『葉桜』をご紹介します。

※ネタバレございます。ご注意ください。

★あらすじ

高校三年生の主人公は、幼い頃から書道ひとすじ。書道教室の先生に、十年来の長い片想いをしながら。

もう1人のキーパソン、妹の紗英は、いわゆる天才肌。全国模試はいつも一桁の順位をキープし、運動が出来て要領のよい美人です。

しかし、主人公は16歳の妹が心配でたまりません。ある因縁によって、17歳になったら妹は突然にこの世を去ってしまうかもしれないのです。

一方、想いを寄せる先生とは、思いがけず2人きりになる時間が増えて、、。

★感想

告白シーンが、あまりに綺麗。私、息をとめて、ひっそりとページをめくりました。

だって、相手を目の前にしながらも、半紙に向かい、和歌に想いを託してやりとりするなんて。

私がほんの少し咳払いをしただけで、ふたりの静寂なひとときは壊れてしまうんじゃないか。ついつい、そんなことを考えて。

筆に墨を含ませ、一字一字を丁寧に顕して。「先生」が書き終わるのを、心をざわつかせながら待つ、「佳奈」。

その切ない横顔が見えるようで、読みながら胸が締め付けられる思いでした。

佳奈も、「津田君」も、分かっています。自分が持つ好意はけして届かないだろうこと。

それから、自分に向けられている好意を、きちんと敏感に感じ取っている。ふたりも、そして、先生も。

そのあたりが、よく見かける「全然気が付いてませんでした!びっくり!」的な不自然さの残る筋書きと違って、

とても現実的であったように感じます。

青春のにおいがたちこめながらも、ちょっぴりビターな大人の味。ほろ苦くて、ときどきホロリと何かが溢れ出してしまいそうな。

そんな小説でした。

ぜひ、ご一読ください。


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