秘蔵のヒューマンストーリー。『いま、会いにゆきます』

『いま、会いにゆきます。』

このタイトルの小説、あるいは映画を目にしたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

管理人は、遅ればせながら原作小説を読破したところです。

作者の市川拓司さんの繊細な描写力、登場人物たちのあたたかな言葉違い、、。

恥ずかしながら、読み始めからわずか数ページで涙ぐんでしまいました。

駅内で何気なく手にした一冊。こんなにも感動させてもらえるなんて幸運でした。

以下、本作品のあらすじをご紹介しています。

★『いま、会いにゆきます』あらすじ

29歳のシングルファーザー、巧(たくみ)は、6歳の息子とふたりで暮らしています。

司法事務所につとめながら、休みの日は息子・佑司(ゆうじ)と森に散策に出かけるなど、慎ましくも幸福な日々を送るふたり。

そんなある日、ふたりは森でとある女性に出会います。

頭を抑えてうずくまる女性。ゆっくりと顔をあげた彼女は、一年前に亡くしたはずの妻・澪(みお)でした。

『一年たったら、雨の季節にきっとまた戻ってくるから。』

闘病の末にそう言い残して旅立った、かつての妻。巧と佑司は戸惑いながらも涙を浮かべて喜びます。

しかし目の前の彼女には、巧と佑司と過ごした記憶がすっぽりと抜け落ちていたのでした。

★読後レビュー

※ストーリーの展開・結末に関わるネタバレはしておりません。未読の方も安心してお読みください。

エレベーターや電車といった密閉された空間が極端に怖い、映画館で自分の意思とは無関係に叫びたくなってしまう・・など、身体に様々な不具合を抱える巧。

幼い息子とやさしく暮らしながら、一方で巧はそんな自分自身に苦しんでいましたね。けれど、彼は作中でけして後ろ向きな思考に陥ることも、深く落ち込むこともありませんでした。

あまぐにが作中で印象的だったエピソードは、巧が佑司を映画館に連れて行ったときのものです。

身体の不具合から、一緒に映画を観ることは出来ない巧。佑司を入口まで送り届けたあと、もどかしさを感じながらも、カフェで時間をつぶします。ところが、つい時計を見るのを忘れてしまった巧。気が付くと上映終了から1時間以上が経過していました。

慌てて映画館に駆けつけた巧。佑司は取り残された寂しさで顔がぐちゃぐちゃです。しかし佑司の第一声は『たっくん』(=父親である巧)の無事に安堵したものでした。

『たっくんが無事でよかった。』

たった6歳で。無意識で佑司は、自分の悲しみよりも大切な人を優先しているのです。

息子だから父親に甘えて当り散らすとか、父親だから息子を守るとか、支えるとか、そういう関係に捉われていないように感じました。

そして帰り道、路で倒れこんでしまった巧。佑司は巧のために全速力で自転車を走らせます。それを見送る巧は、朦朧としながらも『そんなに速くこいでは危ない』と佑司が心配でたまりません。佑司のちいさな体が、トラックに撥ねられたら。カーブを曲がり切れなかったら。意識が混濁とするなか、ただ無事を祈っています。

巧と佑司の絆の深さ、ただ相手の無事を願い、祈る儚さ。

行間から垣間見える2人のあたたかさに、何度も胸が熱くなりました。

ずっと無事でいてほしい。笑顔でいてほしい。悲しい想いをしてほしくない。

大切な人を想うとき、人は自分や相手の立ち位置に関係なくそう思うのかもしれませんね。

泣けるヒューマンストーリーをお探しの方はぜひ手にとってみてください。
きっと、あなたの本棚にそっと並べておきたくなるような、秘蔵の一冊になるかもしれません。

ラストの展開は目を見張ります。確かめてみては。


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